コラム
8. 職人の技術について

私に鈑金塗装の技術を教えてくれた先輩の時代はよかったようだ。仕事に対する完成度ばかりが厳しくいわれてその仕事に何日かかっても親方が文句を言っている姿をみたことはなかった。月給が一万円ぐらいの時代に普通の職人さんは一日あたり約一万円ぐらい稼いでいたから当然だったのかもしれない。

職人さんは気の済むまでその仕事に情熱と時間がかけられ、またその抜きん出た完成度に又お客さんがつくというとても良い環境だった。今の逆である。なんとうらやましい時代だったのだろう。

今の技術者に国宝並の高度な技術はお客さんが望まない。
お客さんが望むのは、当たり外れのない平均化されたものを、安く早く提供してくれることだけだ。昔は超がつくほど高い完成度の仕事をお客さんに買ってもらっていた。でも今は違う。

この世界(鈑金塗装)もロマンが少なくなったものだ。なんだか心が乾いていくような気がする。でも当社が一向に儲からないのはいつまでも時代遅れの高度な完成度を目指しているからだと、わかっている、しかし儲からなくてもいいから、これだけは改めたくないものだと思っている。利益よりロマンのほうが男には大切だからだ。

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