コラム

97   三方一両損

昔、大岡越前と言う奉行がやったのが始まりだが、つい最近も小泉総理が医療改革で言った。しかし関係者はいつの時代もしぶしぶ受け入れている。

無理もない。越前の話も、小泉総理の時も当事者は負担がのしかかったからだ。そして私の工場では、この前こんなことがあった。山田さんが夜、自宅で寝ていたら酔っ払いの車が道路横の駐車場においてあった彼の車に居眠り運転でぶつけてしまった。

ノーブレーキだった為か山田さんの車はぐちゃぐちゃになってしまった。ここまでは良くあることだ。酒に酔っていても対人、対物保険は出るので(車両保険や搭乗者保険などは全くでない)

酔っ払いが加入していた帝国損害保険の鑑定人がやってきて、へこんだ車の修理費の見積もりをした。そうしたら修理費が中古車の査定表にのっている限度額いっぱいで45万円と出た。

山田さんが知っている中古車屋のオヤジは「60万円は出してくれないと同程度の車が用意できない」と言う。だから私の工場から山田さんに、代車がでたまんま膠着状態に入った。

そして十五日くらい経って山田さんが私のところへ相談にきた。「ひろみさん、帝国保険会社はわしに十五万円払えと言ってきているが、わしは寝ていたのだから全然悪くないと思うから払いたくないし、

帝国保険会社はもう45万円以上は絶対出さないと言っている、中古車屋はあと15万円はだしてくれないとどうにもならないって言っているし、へこんだ車は45万円では直らないと言うし、わしはどうしたらいいんだろうねぇ、、、、、」

「私は直接事故とは関係ない第三者だから何ともいえませんがちょっと帝国保険会社と話をしてみましょう」と言って山田さんを帰した。保険会社の担当者を呼んで話をしたが不足分の15万円の壁で取り付くしまもない。

そこで私は「私が山田さんの車を5万円で買おう。事故とは関係ない私が5万円も出すんだから帝国保険としてもあと5万円位だしなさいよ。それから酔っ払いにも5万円出すように言ってよ、、、、、あなたこのままでは差額を一人で全部だすようになるかもしれませんよ、、、、とか言ってね」。

一週間くらいしたら山田さんは代車を帰しにきた。そして「この前は大変世話になりました。お陰で何か急に話がついて車を乗り換えることになりました。どうもありがとうございました。」と言って持って来た缶ビールを、ひと箱置いて喜んで帰っていった。

私は山田さんのへこんだ車を買い取ったが、処理について考えた末に中古部品を使って修理し、県外のオークションへ流して少しの利益を得た。そして今回のことで考えた。山田さんは車が新しくなって喜んだ。

私は少しだがオークションで儲かったし、山田さんに貸していた代車料も気持ちだと言ってあとから帝国保険が少し払ってくれた。帝国保険会社は膠着状態だった示談が早期に解決できて私に感謝の電話をよこしていた。

酔っ払いは、酔っ払って事故した責任としては破格の5万円で話がついて安堵したようだし、今回の三方5万円損は被害者がいなかったのではないかと思っている。

保険の代理店としてはどこか間違っていただろうか私は・・・・・・・・・・?

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