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どこにも似たような事をする人がいるものだと思った。その日は何をしても裏目に出ていた。彼女とつまらない口喧嘩をしていたからいやがる彼女にむりやりキスをしたら舌をかまれて少し血が出た。 それからは舌がすごく痛い。何日たっても治らない。恥ずかしいので誰にもいえない。2日目位から腫れてきて、心なしか色も薄いピンクだったのが黒っぽい紫色に変わってきた。このままだと舌が腐ってしまうかもしれない。 腐ったらどうなるのだろう。根元からとれてしまうのだろうか?そうなったら御飯が食べられなくなってしまうかもしれない。もう機嫌の悪いあいつにキスなんかするのはやめよう。えらいことになってしまった。 みっともないので口を開けないでいたらとうとう口いっぱいになった舌でしまいには呼吸も出来なくなった。このままではまずい。死ぬかもしれないし、とに角、恥ずかしいとか言っておれなくなったのて゛病院にいってみることにした。 舌が痛いと言葉がしゃべれない。医者はながい時間をかけて僕の小児マヒのような言葉を理解したのか、注射を一本打ってくれ、薬をくれて明日から毎日来るように僕に言った。注射はよく効いてみるみる舌は、腫れが引いてきた。 医者の言う事には、悪質なばい菌が入ったのだろうと言う事だった。3日ぐらいしたらどうにか普通に話が出来る程度までに回復した。ありがたい事だ、病院は。これで舌が腐らずにすんだ。一時はどうしようかと気をもんだのに。 閉話休題、出張があったのですこし遠くの街に行った。終電に乗り遅れたので、どうかとは思ったのだがタクシーに乗った。かなりの長時間乗っていないといけない。 トンネルに入ったときにルームミラーに運転手の顔が写った。左の耳から前あごにかけてヒドイ刀傷があるようだ。しかしこのタクシー会社は大きい会社だからまさかヤクザの人を雇うわけがないしなぁーとか思いながら、話し掛けようか、どうしようかと迷っていたら、向こうが先に話かけてきた。しかしその口調がなんか変だ。 宇宙人みたいな声でなにかの神経系の病気を患ったような声を出している。ヤクザの抗争で顔を切られたのか、それとも仕事中に車の事故をおこして大怪我をしたのか、などと思いを巡らせていたら別に普通の事を話している。 はいはいと話を聞いていたがどうもヤクザではないようだから先ほどから気になっていた顔の傷の事を控えめな言葉で聞いてみた。そうしたらこの傷は刀傷なんかではなく、交通事故でもないそうなのである。 「じゃその傷は何の傷なのかね?」と聞いてみたら病院で医者がつけた傷なのだと教えられた。医者がつけた傷ならどうして医者に元どうりに直してもらわないのかねと聞いてみたら、近いうちに又顔を切らなくてはいけなくなるそうだから放っておくのだそうだ。 「又手術を受けるのかね?」「そうなんです。実は私は舌ガンなんです。この前の手術で舌を半分切除したんです、再発の心配がなくなったら舌を元どうりの形に修複しなくてはいけないのでその時に又顔を切らなくてはいけないからです。彼は切られた為、舌が縦に半分無いそうだ。 その上その細い舌も先が二股に割れていて蛇の舌みたいになっているらしい。それで声がまともに出なくて宇宙人みたいな話かたになっているようだ。「舌ガンと言うのは痛いのかね?」「いいえ私の場合全然痛くなかったですねぇ。ガンとしては、、、、」 「ではどうしてガンを発見できたのかねぇ」「それがそのう、、、、、」しばらく静寂がつづいた。「実はねぇお客さん。私は今は独り者なんですけど前は彼女が居たんですね。自分で言うのもなんですがとっても綺麗だったんです、しかしなんと気が強かったんですよ。 それが私に愛想をつかして別れてくれなどと言うもんだから無理やりキスしたんですよ。そうしたら舌を噛まれましてね、痛かったのなんのって、叩いてやりましたよ。それきり彼女とは連絡をとってないんですが、その噛まれた舌が二日たっても三日たっても痛い、 それも段々痛みがひどくなってくる様な気がしましてね、傷でも出来て化膿しているのかなぁとか思って大きく口を開けてみたらなにかシコリの様なものがあるんですねぇ。きっと噛まれた時に内出血してそれが元で血の塊が出来たのだろうと思っていたんですね。 血の塊ならそのうちに日がたてば治ってくるだろうと思っていたんですねぇ。ところが益々痛くなってくる。一ヶ月もたったらとうとうご飯も食べられなくなってきましてね。仕方がないから耳鼻咽喉科にいったんです。 そうしたら医者がこれはうっ血ではないというんですねぇ、そして外科のA先生を紹介してもらって舌ガンだと分かったんです。しかし未だ早いので舌を全部とらなくてもいいだろうと言う事で、左の前半分ちょっと切るという話だったので手術を受けたのですが、こうなっちゃいました。 先生はもうそろそろ美容整形に行けと言うんですが再発したらいけないから未だ行ってないんです。でもお客さん、私は幸せです、お客さんとこうして話も出来ますし目も耳も鼻もちゃんと有ります。不自由はしていないのですからこのくらいですんでよかったと思っています。 別れた彼女とキスしてなかったら、もっと早く病院に行っていたら、手術しなくてすんだかもしれなかったんですがねぇ。でももう二年経ちましたし再発しないみたいだから美容整形に行ってみようかと思ってます。この声じゃ彼女が出来ないですしね。そろそろ彼女が又ほしくなってきたんです。でも、もう気の強い人はいやですねぇ、、、、、 |
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