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55 天網恢恢 こんなことを書いたらお上に酷く怒られるかもしれないと思うのだが、事実だから仕方がない。およそ法律というものはいい加減な物で法の網をくぐって 巨額の利益を得る者がいるかと思えばスピード違反で捕まって泣いているものもいる. 昔々大岡越前と言う名奉行が「天網恢恢粗(てんもうかいかいそ)にしてもらさず」(天の網は網目が粗いが決して悪人をもらす事はない)と言ったそうだが、現実の社会はどうもそうとは思えないことばかりだ。 大物政治家が賄賂を貰ったりして、警察に捕まって大臣を辞職するとか、しないとかはいつもの事のようにテレビのワイドショーで取り上げられている。法律というものはいつも後手後手にまわって、ずる賢いやつが得をしているように思えてならない。 さきごろ我が業界にも40年ぶりに遅きに失して国土交通省が非常に重い腰を上げて大分県で仕事をしたそうだ。その経緯は大体こうらしい。この業界の場合、自動車分解整備事業者であるので仕事をするということは自動車を分解して整備をすると言う事だ。 法律では自動車の分解整備をする時は国土交通大臣から許可をもらって認証工場となり、そのうえでしごとをしないといけないということになっている。違反すると道路運送車両法により50万円の罰金がかかるということになっているのだが、ところがこの業界は無視されていると言うか特別扱いされていると言うかその必要が全くないのである。 私が知っているだけでもう50年以上も違反が繰り返されているが何事もなく放置されている。「大酒を飲んで飲酒運転をしても事故をするか、捕まらなければそれでいいのさ」という人もいる。それはそうかもしれない。 しかし仮にもお客さんの車を預かってエンジンを外したり足回りをバラバラにしたり車体をちょん切ったりつないだり、車検工場よりもっともっと酷いことをしているのに国土交通省は過去に何もいわなかったし、なにもしていない。車は命を乗せているというのにだ。 たとえば普通、散髪屋を開店するにも理容師免許と言うのが必要でそれがなければ開店できないそうだ。たいていのお店は免許がいるか,それとも警察か保健所等に届けを出して許可をもらうなど、何か届をしないといけないのが当たり前で、何もしないで、どこにも届けも出さずに勝手に開店して、がんがん他人の事故車を預かってきてそれらの修理(車体を切ったりつないだりするので大手術のようだ)をやれると言う業界などおそらく国内には我が業界以外に存在しないだろう。 それがこの度、国土交通省が大分県のある工場に赴き違反をしていたので厳しく指導したと新聞に載ったそうだ。それをうけて一部のディーラーや保険会社では下請けの工場にすぐに認証工場になってくれないともう御宅の工場には仕事は出せないと言ってきたそうである。このことはすぐ全国に飛び火して大問題になった。 工場としては死活問題で仕事が入ってこなくなったら大変だからである。泥縄では有るが全国の津々浦々で先ず2級整備士の免許を取ろうということになった。2級整備士は運輸大臣が発行する国家資格なので非常に難しく、仕事が終わったらすぐに晩酌をする癖がついている板金工場のオヤジなどにこの様な難しい勉強などできるわけがない。 3分も教科書を見ていたらすぐにウトウトとしてきて寝てしまう。かといって若い工員に免許を取らせたらすぐに退社して他社で活躍するのがわかっている。そう言うことで私の工場の近くにあった一軒はこれを機会に廃業してしまった。 儲かりもしないのにめんどくさい仕事を続けるより月極め駐車場にでも貸した方がまだましだと言う事らしい。これからもこう考える人が当分つづくかもしれない。業界が縮小することもありうる。 仕事をやめて駐車場経営などができる人はまだ幸せな方で借り土地に借り工場などで家のローンもあり、子供の学資も必要とした場合、辞めてしまうこともままならず、行き着く所までいかないとどうしようもないと言うのが今の本音だ。 倒産したり破産したりする人が出るかもしれない。当社も風前のともし火でいつそうなるかわからない。それでもやりつづけるしかない。頑張るしかないのだ。しかし頑張ってもしかたがないかもしれない。話は変わるが昔ボーリング場が儲かるからと言って乱立した。 当時はゲームの待ち時間が二時間というのは、ざらだったのだが世の中変われば変わるもので、ブームが去った時には あれほどいたお客さんはどこへいったのか激減した。そしてお客の取り合いとなりゲーム料金は下降の一途をたどった。 しかしそれでも最後まで残ったボーリング場は全部のお客さんが来るからきっと、ものすごい儲かる。という話がまことしやかに囁かれたが、事実は期待に反して最後に残った一軒もゲーム料金の値下とお客さん不足にあえいでいる。こんなことを過去に見てきているから血へどを吐いても頑張ろうなどとは思わないのである。 ましてこの業界の経営者はそろって定年を過ぎた年寄りばかりときている。後継ぎもいない人がたくさんいる。そこへきて、やれ免許を取れ、認証に必要な工具を買え、建物も半分くらい基準にあうように建て替えろ、ときたのではやる気はしぼんでしまうのも無理はないかもしれない。 それらの条件を全部クリヤーしても売上が増えるわけではないのだから。奥さんと二人で細々とやっている友達は言っていた。「潜りでやるよ。捕まったらそれでやめるよ。」それが今までどおりだから地道な考えかもしれない。 本当はいけないことだろうけれども。嘘か本当かしらないけれども車体組合に参加している工場は運輸局から猶予期間がいただけたそうだ。一年くらいの間に認証を取ればいいことになったらしい。車体組合もたまには粋な計らいをしてくれるものだ。組合に入っていてもメリットは今まで全然といっていいほどなかったから。 車体組合に入っていたらそれだけで労働基準監督署の指導で塗装ブースのシンナー濃度の測定を一年に二回以上しなさいという指導がきた。これが毎年五万円かかっていたので各社とってもいやがっていた。と言うのは潜りで塗装作業をしている他の業者には大掛かりでやっていてもこの指導は全然されていなかったからである。 このあたりは天網恢恢とはとても思えない。真面目にやっている業者がバカを見ていて、いいかげんな設備と我流技術でやっていて車体組合にも入っていないもぐりの業者は野放し状態がもう何十年と続いているのである。こんな所を見ていると車体組合を辞めたくなるのも無理はないと思ったりする。 あの潜りの工場たちはちゃんと税金を払っているのだろうかと不信に思えてくるのはわたしだけだろうか?聞くところによると税務署と言う所はいつもとても忙しくてタレコミや密告などがあった事業所にしか調査にいかれないのが現実らしい。だとすると天網恢恢など、どこにいったのだろう。 尤もこれが世間と言うものですよと言ってしまえばそれまでなのだが、、、、、、、、、
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