コラム

 

57  台風

台風が近づいている。かなり大型の台風だ。非常に強力だった去年の18号と違って風台風ではなく雨台風だという事だ。雨台風なら傘屋とタクシー会社が儲かるだけで我々には全然関係ないだろうと思っていたらとんだ見当違いだった。

次の朝になって主要道路が寸断されている関係でヘリコプターからの現場状況の映像が次々にテレビに放映されてきた。川西や川下は目を覆うばかりの悲惨な状況だ。中古車置き場に並べてある車が全部屋根まで泥水に浸かっているところを映しだしている。

岩国市には錦川という美しい川があるがこの大きな川があちこちで氾濫したのだ。錦川には名橋と名高い錦帯橋がかかっている。川底から橋板までは10メートル以上の高さを有するが橋脚にはおびただしいゴミや流木などの浮遊物がひっかかっていてその量は今にも橋を押し流すのではないかと思えるほどだった。

(60年前も流れた記録がある)付近の住宅街から市役所の避難勧告により疎開してきた住民が、受入先の高台にある観光ホテルからその様子をまんじりともせずに見ていた。

一部の人たちはやけくそ半分、諦め気分でビールを飲みながら見ていた。そうこうしているうちに大型のタンクローリー車が上流からどんぶらどんぶらと流れてきて橋脚にぶつかり、とうとう橋脚を押し流してしまった。

恐ろしい水の勢いである。そしてあちらこちらに多数の被害が発生した。もともとこの川は流域距離が長く周南市のはるか奥のほうからぐるぐるとめぐりめぐって流れてきていたので、支流の数もすごく多い。

多多ある支流にはダムも何ヶ所かある。その全部が岩国市に注ぎ込むのだ。当日の濁流は普段の何十倍に達し高さが10メートル以上ある土手は決壊もしていないのに泥水は簡単に土手を乗り越えて鉄砲水が付近住宅街に流れ込んだのでひとたまりもない。

夜中11時のことである。海が満潮の時間帯と重なって台風の為に海水が高潮になっていたところにすでに前日からの大雨の為、貯めきれなくなった二つのダムが一斉に大放流を開始し、それに錦川の大水がプラスされて各地の住宅街に流れ込んだので濁流が2メートルから4メートルの水深になってしまった。

少し上流の美川町では二階が床上浸水をしていた。夜中、急に水が来たので家財などは何も運び出すことは出来なかったといっていた。持ち出せたのは預金通帳だけだと言っていたので逃げるのが精一杯の様子だったようだ。

被災された方たちにはかける言葉もないほどお気の毒な状態だ。家財がそれこそ全部流失してしまったのですべて新しい物を買ってこないといけない。

多田地区は新興住宅地なので家が皆新しい。したがって家のローンが多く残っている。家のローンが残っているという事は金融機関から強制的に火災保険をかけさせられているから畳や戸、床のフローリングや壁の修理代などは保険から間もなく出るので問題はなかろう。

問題は同時に失った車だ。金額が高いので一台でも大変なのにいっぺんに三台も四台も買わないといけない。旦那と奥さんの車は家のローンのために生活が苦しいので車には車両保険がかけていない人が多かった。

車両保険には二種類があるのだがせめて安い方の車両保険でもかかっていたら救われたのだがまさか水没などがあるとは思いもよらなかったので掛けなかったのだ。

同じ理由で家財保険もかかっていなかったから、家財も全部なけなしの現金で揃えないといけない。若い夫婦にはたいへんなことだった。家の床下に溜まっている膨大な量のヘドロの除去も泣きたくなるくらい大変だが、

車3台、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、風呂の給湯器、タンス、布団、衣類(パンツからスーツまでそれこそ全部)これらを一時に買い揃えるとなるとその出費は大変というより無理に近いものがある。

ちかくのスーパーなども被害がひどくて当分の間、営業が出来ない状態になってしまったのも生活苦に追い討ちをかける。そういうことなどが重なり、二重にも三重にも生活は厳しくなる。マンションなどの一階で被災した人たちの多くは復興の苦痛に耐え切れず他の地区へ転居してしまった。

激しく被災した所は災害指定地域に指定されたので国や県、市などからの援助金が貰えるそうだが気が遠くなるほど先になると聞いた。

何とか早期に実現がならないものかと思うが役所の仕事とは期待するほど、とんとん拍子にはいかないものだ。すぐに集ってくれた復興ボランティアの人たちの方が余程ありがたく、役に立っている感じがする。

勿論いくら遅くても貰える義援金はとてもありがたいのは間違いない。アメリカのルイジアナ州を襲ったハリケーン、カトリーナも付近をずたずたにして通り去ったが三週間もたった頃、住民がやっと落ち着きを取り戻してそろそろと帰還をはじめた時になって又やってきた

次の台風、リタがまたぞろ、ひどい爪あとを残して去った後になってもブッシュ大統領からのカトリーナの義援金は未だ届かず住民を失望のどん底へと導いた。行政とは日本に限らずどこでもこんなものかもしれない。

税金を取るときは何の迷いもなくびしびし取り立てるのだからこんな時ぐらい鶴の一声ですぐに手当てして欲しいものだ。台風の洪水で崩落した高速道路の山陽道岩国インター付近では一ヶ月が経過しようとしているにもかかわらず、

調査中と称して未だに補修工事に着手しておらず利用者たちから厳しい非難を浴びている。これらも親方日の丸的なところが道路公団から抜け切れていない証拠でうんざりだ。

おかげで岩国市内の道路はバイパスとして利用され他県ナンバーの大型トラックが、ガンガン走り抜けていく中で渋滞の問題も浮上しだした。工事に着手しても完成までに半年以上を要するということなので、一日も早い着工を希望するものだ。

私が総理大臣だったらすぐに岩国に飛んできて「大変でしたねぇ頑張ってくださいよ、応援しますから。」くらいの慰めの言葉を掛けて一軒当たり百万円くらいの現金を翌日中には大蔵省に届けさせるのになぁ、、、、、、変人と言われている小泉総理ではむりかなぁ、、、、、、

次へ続く

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