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お足 私はいつも金がない。別にたくさん欲しいとも思わないが商売をしていると普通の人よりは月末などにはお金がたくさん必要だ。 そこで思うのだが貧乏人が大金持ちになることはたいへん難しいし、大金持ちが貧乏に成ったと言うのもめったに例がない。 貧乏人が小金もちになるのや、小金もちが貧乏になるのは良くある話で割りと簡単だが普通のことをしていてはそれもできない事だ。 普通は貧乏人は何年経っても貧乏から抜け出せない。たとえ宝くじが当たって一億円貰ったってすぐに浪費して元の木阿弥。3年も経ったらしっかり貧乏になっているものだと思う。 典型的な例がここにある。寂しいことだが実話だ。三才になる息子と3人でそれはそれは人もうらやむほど仲の良い家族がいた。 市営住宅にすんでいた、身持ちの良い奥さんで主人の貰ってくる給料の中から少しずつでも貯金に励んでいたし、その家族は毎週のように軽四輪に乗って3人で回転すしに出かけるなどして楽しく幸せに暮らしていた。 ある日、旦那が会社の出張の仕事の帰りで飛行機に乗った。その飛行機がこともあろうに墜落して海の中に落ちてしまった。 30人乗りの飛行機に10にんくらいのっていたのだが海中に没したので全員が死亡または行方不明になり旦那はある日突然に帰らぬ人となってしまった。 49日がすんでからまもなく未亡人の所へ労災保険やら生命保険会社など、いろんな種類のお金が一億二千万円くらい振り込まれてきた。 未亡人は三ヶ月はじっとしていたのだがやがて高級住宅地と呼ばれている地域に純和風建築を七千万円かけて築造した。庭の設計や家具などにも約二千万円が使われた。 家が全部完成したころを見計らったのか、死んだ旦那の両親がやってきて生命保険が出たのなら息子の墓の建造費に二千万ぐらい出してくれと言う事で無理やりむしりとって行った。 残りの一千万は車を大きく新しくして少し服を買っておいしいものを食べに行ったらなくなってしまった。半年も経たないうちに現金は全部なくなっていたのである。 そのうえ高級住宅地の住民達は市営住宅の住民と違って薄情で陰湿で、最初は旦那を飛行機で失って未亡人になってしまって可哀想にといってくれていた人が 間もなく保険金で家を建てたとか、身持ちが悪いとか関係ないことなどの陰口で悪口雑言の限りを尽くしだしたのである。 村の中で孤立した未亡人は実の母を呼んで同居するとか色々努力したのだがたび重なる嫌がらせに耐え切れずついに唯一の夫の遺産である家を売りに出して引っ越してしまった。 家はなかなか売れなかったのだが一年後に三千万円でやっと買い手が付いた。新しい買い手は壁にかかっていた絵や庭木などの趣味は無かったので引き抜いて持っていってよいということを言ったのだが 未亡人はすでに手元に現金三千万円しかなく管理する場所も無い事から皆つけて渡してしまった。ところが唯一の残りの三千万円も風前の灯だったのである。 新しく出来た恋人(三歳の息子が良くなついた爽やかな感じの青年)が事業をする為の独立開業の資金として二千万円貸してくれと言ってきていたのだ。 しかしあの人ならきっと成功するし、成功すればどうせ結婚すれば私たちのものだから、投資と思えばどうってこと無いわと思って貸してあげた。 三ヶ月もした頃恋人が店の方がうまく行ってないので追加であと一千万円貸して欲しいとまた言って来た。そして間もなく恋人と電話が通じなくなったので変だと思ってお店に行ってみたら閉店の張り紙がしてあって鍵がかかっていたのである。 そして彼女の周りから誰もいなくなってしまった。仕方がないので未亡人も子供をつれて実家に帰っていったがその時苦しい顔はしていなかったということである。 この話のようにお金というものは身分不相応な金額を普通の人が持ってもすぐに羽が生えたようにどこかに飛んでいくものだ。どんなに地道で意志の固い人でもあぶく銭がたくさん入ったら豪邸や新車やブランドが気になるみたいだ。 お金のことをお足と言うが昔の人は良く言ったものだ。お金を無茶苦茶に浪費する時は大抵楽しいものだがこの未亡人はその頃いつも楽しそうな顔色はしていなかった。 やっぱり貧乏な人はいくらがんばっても金持ちにはなれないってことかなぁ。この未亡人にしても金がないときは小さいお金をせっせと貯金していたのに、大きなお金が入った途端に何かが狂ってしまって、まっしぐらに元どうりの貧乏に突っ走ってしまったようだ。 この未亡人を馬鹿とは私は言えない。私がその立場だったら私だってきっと似たようなことをしていただろう。ただ二年で消費したのが私だったら五年になるだけだ。増やす事は多分無い様な気がする。難しい事だ。お金を増やすという事は。 しかし私が今もっているお金ぐらいが私にはちょうどよくてこれ以上いくら増やしてもたいして意味は無いかもしれないと思ったりするのは私に取り付いている貧乏神のせいかな?、、、、、、、、
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