|
あーあ!事故 とうとうやってしまった。寒い日だった。年末も押し迫った 12月26日のことだ。6時まで伝票整理などをやって仕事を終えたとき、いつもの本屋から定期購読している釣り雑誌が入荷したから取りに来てくださいとTELがはいったので本屋に向かった。 道路はすこし混んでいたが普通に走ることができた。大好きな釣り雑誌を受け取って店を出た。帰路の国道に出るため本屋の駐車場の出口で左右確認をして待っていた。私は右へ行かないといけない。 左を見たら全然車は、来ないようだ。右方向からは車が連なっていてゆっくり流れている。薄暗いからかスモールライトをつけている車が多い。白いトラックが行ったらその次の車の白っぽいワンボックスまで40メートルはある。 国道の車の流れは時速40キロメートル位だ。この二台の間を突っ切って本線に出ようと思い、白いトラックが目の前を通りすぎるや否や私はアクセルをめいっぱいに踏み込んだ。 その瞬間である――――ドガーンと大きな音がしたかと思うと右を向いていた私の車は急に左に90度、向きを変えてしまったのだ。そして10メートル前方に大きくへこんだ黒っぽい乗用車がとまっているではないか。 私は何が起こったのか分からなかった。黒っぽい乗用車から下りてきた大きな男が、目をむいてこちらをにらんでいるのを見て私がぶつけたのだということに気がついた。私は慌てた。完全に舞い上がってしまった。 相手の男はどうも目つき、顔つきからしてヤクザかもしれない。こちらをにらみつけながら携帯電話を取り出すと話し始めている。、そしてその話が終わるまでの二分間で私はやっと正気を取り戻すことができた「車をぶつけてしまってすみません。 怪我の方は大丈夫でしたか?」相手は首に手をやりながら「体は大丈夫だ、だがこの車、新車なんだぞ、どうしてくれるんだよ」「どうもすみません。私の車の保険で処理させていただきたいのですがどうでしょうか?」 「そうかね。そういうことならそれでいいが保険を使うなら警察にいかないとだめだろう?」「はい。おねがいします。」二人は交番へ行った。警官は車検証と自賠責保険証と免許証の提出をうながしながら地図で現場と事故の様子などを確認していた。 警官は私からはすこし聞いただけで話の大部分は相手のAさんとであった。というのはAさんは走りながら私が出てきそうだと推測できたらしく、そしてやっぱり出てきたので右に目いっぱいハンドルをきって逃げたのだが対向車がいたのであんまりよけられなかったと主張しているのだ。 私は背筋が寒くなってきた。私の記憶ではあのとき左方向からの対向車はいなかったはずなのにAさんの話によるといたらしいのだ。そうなると私はたとえ運良くAさんとぶつからなかったとしてもその対向車とは必ず当たっていたはずである。どうしようもないと思った。 恐ろしくなってきた。警官が引っかかったのはAさんの主張であった。事故の前に、相手が飛び出してくるのが分かっていてなぜブレーキを踏まんのだ?などと食い下がっている。「そんなこといったって出るか出ないか分からんじゃないですか。」 警官とAさんの話を聞きながら私はやりやすくなってきたなと考え出した。代理店の顔になってしまっていたのだ。最後に警官が「それでは保険会社をまじえて示談をしてください。事故証明はだせるようにしておくから」といったときにはもう私は落ち着いていた。 交番の前の駐車場でへこんだ車を見ながら二人は話をはじめた。「Aさんあなたの保険会社はどこですか?」「僕のは大日本海上です」「Aさん、さっきも警官が言っていましたが動いている車同士が接触するとお互いに何割かずつ過失割合というのがでて来るんですよ。 そしてその過失が二割か三割かわかりませんが保険を使ったら来年から保険料がだいぶ増えてしまいます。そこで提案ですが私は帝国保険の代理店をしていますが事故車専門の修理工場もやっています。 お互いに怪我はないし車の修理がちゃんとできさえすればいいのであればこの車の修理は私の所へ入れてくれませんか?そうすればあなたの保険は使わないようにしましょうよ」と言ったら「そちらがそれで良ければ僕はかまわないけどね」と言ってくれた。 ヤクザまがいの目つき顔つきに似合わず比較的温厚な人であって安心した。だが自分の車の凹んだ左のドアをさすりながら「くそう“新車だったのになぁ、事故車になってしまった、、、、、」などと一人でぶつぶつ言いながら私の車をチラッと見ていた。 Aさんの車は側面衝突だからドアが大きく凹んでいるが私の車はそれほどは凹んでいない。ライトも割れていないし、バンパーに傷がついているだけであった。これなら簡単に直ってしまうと考えたから私は100対0を提案したのだ。 本来の過失割合は8対2くらいとは思っていたが警官がAさんにばかり説教しているのを見たのと私が過失を100%受け取ったことで相手に迷惑を掛けたという思いから私は完全に開放された。 そして修理工場である私はこの事故によって利益が出てくると言う変な事になってしまうのである。自分が起こした不慮の事故を売上につなげていくと言うのもいかがと思ったが今となってはどうにもならない。わたしはプロなのだから。 自動車の板金屋というのは事故車の修理をする所だからその元になる事故が減ったらおまんまの食い上げに成るわけである。なのに何の因果かわからないが事故の抑止のための啓蒙活動の一環でホームページを書いている。 そしてその読者に効果があったとして仕事が減ってくると「暇だなぁ、暇だぁ」と嘆いて誰か事故でもしないかなぁなんて空を見上げて思ったりする。こまったものだ。しかしもっとひどい人がよその県にいた。 冬になり雪などがぱらついてきたりすると明日の朝は道路に氷が張りそうだ。そんな頃を見計らって自分の修理工場の前の道路上に夜間、水をまく人が島根県にいた。余りに事故が多発するので警官が不審に思って見張っていたら夜中散水しているので現行犯で捕まったそうだ。 付近の評判では修理の腕はかなり良かったそうだが修理の為入庫した車からガソリンがなくなっていたなんてことが時々あったそうだとテレビでやっていた。情けないことだ。我が業界にだけはこんな人はいない筈だったのだが、、、、、、、、、あーあ? |
||
|