コラム

 

夜の蝶V

日曜は朝から暑いし、することもないのでパチンコ屋に行った。玉は全然出ないまま二万円がなくなった。それでも粘って昼まで頑張ったがやつぱり出なかった。

とうとうすってんてんになったのでパチンコ屋を出たが外は暑いし行く所はないし、昼飯はまだだし、どうしようかと思っていたらなんと向こうから歩いてくる女の二人連れは僕がいつも行くスナックバーに勤めている妙子さんと圭子さんではないか。

「やあ!良い所で出会った。昼飯をごちそうしてくれないか?」「なに言ってんのよ。わたしたち、か弱き女性なのよ。反対でしょ?」「パチンコで負けたからお金ないんだ俺、、、、、」「じゃ帰って寝なさいよ」「寂しい事を言うねぇ圭ちゃんは」「あたりまえでしょ。あなた男なんでしょ?」

「ひろみちゃん私がおごってあげるわ。圭ちゃんまたね、、、、」「そう?いいよ、じゃまた」といって圭ちゃんは手を振って走り去っていった。「ひろみちゃん行こう?」「うん」「あんた車でしょ?どこに置いてるの?」「あっち、、」「じゃあまず車の所へいこう」「うん」僕は少し腹が減っていたが車に乗り込み彼女の言うとおり国道を下った。

そのうちレストランにでも止まるだろうと思っていたが妙さんはどこにも入ろうと言わない。天気はいいし(暑いけど)僕の車はマツダなのだがロータリーエンジンはすこぶる快調に非常に静かに海岸通りをすべるように走った。10分も走ったら妙さんが急に「ひろみちゃん私ドライブに行きたい。

ね!!行こう」「ドライブって、、、、、どこへだよ?」「萩に行ってみたい」「萩?」「そう」「だめだよ僕、今日は金がないし」「お金は私が出すわ、だから行こう?」「いいけどさぁ」僕はお腹がすいていたが天気はいいしドンドン前の車を追い越して爽快に飛ばした。

2時間も走ったろうか。萩城下についた。土産物店で焼きいかを食べてから名所旧跡を一通り廻った。山陰添いの道をゆっくり走っていた時である。当たりは夕焼けがとても綺麗だった。

左側に海が見えた時妙さんは「わぁ海だわ、ひろみちゃん、止まって!!」「きれいだねぇ太陽が、、、」道路のすぐ傍に真っ白い砂浜があって岩や松や入り江が、絵のようにとても美しい所だった。

僕達は車を降りてしばらく砂浜に座って夕焼けを眺めていた。指からこぼれる真っ白い砂が気持ちいい。突然妙さんは「ひろみちゃん泳がない?」「水着もってきてないよ」「誰も来やしないわよ、もう暗いし、泳ごうよ」

確かにそこは大きな岩と松にかこまれて誰か来そうなところではなかった。しかし水着はないし第一妙さんだって水着持ってないだろうに、、、と思っていたらスカートだけを脱いでTシャツのまま腰まで海水につかってしまった。

「あーきもちいぃ」といいながら妙さんは沖に向かって泳ぎ出した僕は膝まで水に入って眺めていたが妙さんが余りに沖のほうに行くので心配になりズボンを脱いで妙さんと同じようにTシャツのままゆっくり沖へ追いかけていった。

妙さんはかなり泳ぎがうまいみたいだ。沖の方で一人ですいすい泳いでいる。僕が疲れて浜に上がってきた頃に彼女はUターンを始めた。30分くらいはそこで泳いでいただろう。

あたりが殆んど暗くなった頃に妙さんはやっと水から上がった。彼女は僕から受け取ったタオルで髪をふいて胸にタオルを巻いたままTシャツを脱いでしぼった。そしてふたたびTシャツをきたときにはブラははずしていた。

女の子はどうもこういう魔法が上手だ。「ひろみちゃんシャワーを浴びたいんだけどねぇ」「シヤワーはないよ」「あの向こうのモーテルにはあるかもしれないわね。私、髪を洗いたいのよ」「あのモーテルには多分あるだろうけど、、、、」僕は二人でモーテルにはいるのはいやだった。

というのは妙さんは不倫とはいえ友人の勝男の彼女だし、なんでぼくが妙さんとこんな所にいるのか分からなく不思議だった。今ごろは勝男との中がうまく行ってないのだろう。だから今日だって僕を連れて妙さんはこんな所まできたのだろう。

妙さんの言う遠くに見えていたモーテルに入っていった。そこはどうみてもラブホテルだったが妙さんは迷わずに入って行った。しかたなくぼくも入っていったが中は怪しい灯がともっていたがとても豪華絢爛な部屋だった。

妙さんはバスタブでジャブジャブと体を洗っているようだった。大きなバスタオルにくるまって出てきた妙さんは「少し疲れたから休んでいこうよひろみちゃん。私少し寝るからね、後で起こしてよ」と寝てしまった。

彼女は一人でベッドに裸で寝ているのである。僕はどうしょうかと思ったがしかたがないのでテレビでも見ようとスイッチをいれたらなんと裸の男女が絡んでいる所が映し出されていたのでびっくりしてすぐに切った。

そしてしばらく海を見ていたがおもいだしたようにバスに入つてみたら案の定、妙さんの下着がぬぎすててある。僕はパンツとブラとTシャツを水で簡単に洗ってエアコンの前にぶらさげておいた。

妙さんは一時間も寝ていただろうか。僕が乾かした下着を着ながら「ひろみちゃん洗ってくれたの?ありがとう、あんたバカねぇ」といいながら僕の肩に手を廻してキスをした。「それよりもう帰ろうよ。

外はもうあんなに暗いんだよ」「そうよね」妙さんはやっと帰る決心をしたらしく髪をとかしていた。そして車に乗ると「さあ帰るよ」といって前方を指差した。かえりはけっこうたいへんだった。

妙さんはカーステレオに合わせて歌い出した。妙さんはお店では結構歌は上手だと思っていたがどうもあれは機械にだまされていたみたいだ。車の中で聞く歌は大分音が外れていて殆んど寺の坊さんが唱えるハンニャー、ハーラー、ミィタァジィとしか聞こえなかった。

ひとしきり活発に歌った後、彼女は車の中で又、うとうとしはじめた。さっきモーテルで休んだはずだけど、、、と思ったけど考えてみれば男と女が狭い部屋の中に一緒にいるのによく寝ていられるなぁとか思ったけど彼女の顔をのぞいてみたら今度は完全に眠っていた。

よほど僕の事を信頼しているかバカにしているんだろう。僕も疲れていたが余り泳いでいないので彼女ほどではない。夜遅くなって妙さんのマンションについた。妙さんは「少し休んでいく?コーヒーでも入れてあげようか?」といったが僕はそのまま失礼した。

妙さんのなげキッスが妙になまめかしく玄関ドアに消えた。妙さんは変な女だ。なぜ彼女といるときには変な気持ちにならないのだろうと僕は思った。きょうだってラブホテルに男と女がいるのだから変な事に成らない方が変なのになぁと今頃になって思いながら僕がバカなのかなぁーと思ったりした。

エンジンの回転を上げてマンションから遠ざかった。近くでしているらしい花火大会が綺麗だった。

次へ続く

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